嫌いだと言うより,怖い。テレビなら比較的安心して観られるが,演劇では,いつ役者が舞台から飛び降りてくるかわからない(テレビから飛び出してくるのもそう遠い未来ではない)。
嫌いだから,脚本の良し悪しもわからない。でもまあ,おもしろいかおもしろくないかは,小説を読むのに毛が生えた程度だが,わからないでもない。
そんな程度で,この感想文を読んでほしい。結論から言えば,おもしろい部類に属すると思う。「在来種」と「外来種」という二つの単語だけで,いじめの問題から,北方領土問題,果ては君も書いているとおり「思想」や「宗教」まで手を伸ばそうというのだから,大風呂敷を広げすぎだ。その上,書かれているのは人間ではなく,自然なのだから,地球全体の話と言うことになる。
はてさて,「天才的発想」と言っていいのか「演劇空間が持つ力」と言っていいのか。島国日本は数万年前までは大陸と陸続きであった。その何万年の間に日本の島国根性ができたか。いや違う。つい最近までは,村は山間にあり,山の向こうは別の「くに」であった。その境界は魑魅魍魎であふれた異界(死の世界)であった。そこで一生を暮らすものにとっては,海を見たこともなかった。それは海「外」でも同じことである。みんな地球は丸いと思っているが,実際,海「外」に行った人はどのくらいの割合がいるのか。僕は,今にでも宇宙の深淵に落ちていくんじゃないかと心配するほど地球が丸いことを信じているが。
その地球の一部から発生したと言われる人類は,本能が破壊していたため,どんどん繁殖し,生存範囲を広げ,世界中に存在する。そこには「外来」も「在来」もない。だから,人間「自体」が「究極の外来生物」ではあり得ない。
じゃあ,「究極の・・・」とはなんなのか。
残念ながら,私にはわからない。「進化の袋小路」というのもよくわからない。動植物の進化が鈍化したとき,最後まで進化(変化)し続けるのは,細菌,ウィルスの類だろう。動植物は細菌の進化に適応できず,絶滅し,細菌は,進化した細菌をさらに進化した細菌が乗り越えていくだろう。そして,最後は地球全体が,タンパク質とアミノ酸の海になるだろう。しかし,細菌やウィルスが「究極の・・・」というのは間違いだ。細菌やウィルスも他の動植物と共存してきたからだ。生命循環の重要な要素である。
であるならば,「究極の・・・」というのは,「劣化」し,「思考停止」に至った人間の意識以外にない。意識が外化し,「名前」をつけることによって,実体化する。名前さえつければ,劣化し思考停止に至った人間は安心する。安心するのはいいが,実体化したのは,劣化して思考停止に陥った意識でしかないのであるから,「エビデンス」などはない。簡単に言えば,概念化されていない意識の名称であり,「そう思いたいからそう思う」と言うことでしかない。「外来種」「日本人」「国家」どれも曖昧な概念であり,定義は後からつけられる。そして,そのときの都合でいくらでも変えることができる。高血圧の基準を変えた時には,一夜で1,200万人が「健康」から「病人」に変わってしまった。「エビデンス欠如」の典型だ。ただ患者を増やしたいだけ,薬を売りたいだけの基準の変更である。
博物学の一分野としての分類学は,近代西洋の意識である。日本人は,古来,分類するより同じ目で見ること,共存することを好んだ。「鳥獣戯画」はその意識の表れの一例である。だが,その分類学が「機械」を作る基礎となり,「人工知能」と呼ばれるものまで作ってしまった。この先待っているのは「ターミネーター」の世界だ。
そろそろ気づかなければならない。なぜ劣化したのか,なぜ思考停止に陥ったのかを。
「資本主義的生産様式が支配的な社会の富は,膨大な商品の塊として現れ,個々の商品はその要素として現れる。」
これは,「資本論」の始めの1行であるが,ここにすべての鍵がある。ここでマルクスは,「商品の塊が富だ」と言っているわけではなく「商品の塊」として「現れる」と言っている。つまり,商品というのは,じつは不可解な存在で,それが,富としてしか見えなくなっていると言うことだ。その昔,富は金銀宝石や,米俵で現れた。それらを多く持つものが,同時に権力者であった。いまは,商品の化身である「お金」を持つものが権力を持つ。しかし,紙幣は尻拭きにもならない紙切れだし,今やそれもコンピュータの中の電荷に置き換えられている。それでも人々はそれを「富」だと思っている(「思わされている」と言ってもいいが,思わなければ生きていけない現実がある)。これこそが,思考停止の原因であり,人類の劣化の根源であると僕は思っている。
そのお金を得るために,自分の望まない仕事をしているサラリーマンは一種の統合失調症だ。水も食事も出てくるわけではないのに,ぱたぱたとパソコンのキーをたたいている。そんな気の狂ったような動物は人間以外にいない。
そういう意味では究極の外来種はサラリーマンかもしれない。
「サラリーマンよ,地上から消えうせろ!!」