新哲学入門 廣松 渉 1988 岩波新書













新哲学入門

新哲学入門



非常に難しい本である。読み終えるまでに少なくとも4回挫折した。難

しいというのは論理が特別に難しいというわけではない(少し難しいが)。文章が難しいわけでもない(「です・ます」調の口語体である)。単語が難しいのである。哲学の用語と、日本語(漢字)がもつ意味と、ドイツ語(とフランス語?)が理解できなければならないだろう。たぶん、ドイツ語がわかる人にとってはドイツ語で書いて貰った方がわかりやすいと思う。

特に前半が難しい(面白いけど)。後半は慣れもあって比較的スムースに進む(話がいくらか具体的だということもある)。

簡単に内容を要約してしまうと、人間は社会的な存在であり(社会的に生きているということ)、考えること(考え方、感じ方)も社会的に形成されているということを綿々と書いてあるだけである。(ちょっと要約しすぎか。)認識論としてこのようなことをいった人がいなかったのだろうか。もしそうなら哲学的(学問的)意義は大きい。(が、「岩波新書」という出版形態がよかったかどうかは別である。)

たぶん、彼にとっても、日本にとっても(世界にとっても)この様な形で、人の社会性を述べることは必要であってのだと思う。ただ単に、「人間は社会関係のアンサンブルである」ということで片づけていた部分を深めることは必要なことである。「科学的認識(存在、実践)」という常識を根底から覆す論理はまさしく今必要とされていることである。最初に「難しい」と書いたが、できればみなさんに「目を通して」欲しい本である。
p204”意識を具えた身体的個体”なるものは、上述しましたように、決して閉じた実態ではなく、オープンシステムの部分系であり、



p209意識現象は、単独者的営為ではなく”協働”の所産なのです。

・・・謂うなれば過去における他人との”現在的協働とも謂うべきものを含むこと



p213「一体的」”他者理解”という形態をも含む多岐多様な”協働体制”の形成される場であり、そのことに俟って”協働主観的”な”意識現象”が具現する
第2者と第3者の関係において他者認識の基礎ができる

00.11.10

(2000年記)

シェアする

フォローする