神の刻印 グラハム・ハンコック(上・下) 1992 田中真知訳 1996 凱風社


お風呂本。ハンコックの本は基本的にお風呂に入りながら読む。「インディー・ジョーンズ」ばりのアーク探し。学者ではないのにここまで書けるのはその行動力と探求心のおかげだろう。インディー・ジョーンズ「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」が公開されたのが1981年だから著者も刺激を受けていることは間違いない。結局、アークは目に出来ないし、聖杯とアークの関係もはっきりとしないが、それまでの探求過程は鬼気迫るものがある。
学説としては新説なのだが、学会はどのように受け止めたのだろうか。素人の戯言と片付けたのではないだろうか。この本ではまだ後の彼の著作に見られる誇大妄想的なものは見あたらないのだが。
彼が命を賭けざるを得なかった戦争はまだ各地で続いている。貴重な文化遺産が壊されることも起こっている。人が作ったものが朽ちて大地にとけ込んでゆくことは自然なことである。しかし、それが戦争という行為で行われること、人と人との対立の結果が破壊であることは大いに憂慮すべきことである。
歴史学者、考古学者にとってはそんな悠長なことをいっている場合ではないというかもしれないが、歴史学や考古学が必要なのは現代のイデオロギーを批判するためである。現状(体制等)はアプリオリに存在するわけではない。それを明らかにするのがそれらの学問の役割ではないだろうか。