資本論の誤訳(こぶし文庫―戦後日本思想の原点) 広西 元信 2002こぶし書房


私たちは誤訳だらけの資本論を読まされていた!確かに彼の指摘した箇所を誤訳ではなく読むと,理解が深まる。彼は,ドイツ語版だけでなく,英語版,フランス語版,ロシア語版を読み比べて,それぞれの誤訳を指摘している。
日本のマルクス学者(翻訳者)がなぜそんな単純な誤訳をするのか。その理由も書いてあるが,訳すにはどうしても訳者の主観が入ってしまう。意図的な誤訳はないと思いたいが,それならば訳者の資本論理解の浅薄さがわかってしまうことになる。
ただ,societyが社会であり,会社でもあるというのは,どうも腑に落ちない。どの辞書にも「会社」という訳語は載っていないのだ。しかし,companyは会社でもあり,人の集まりでもある。
もし,societyが「会社」でもあるなら,アソシエイション論の先駆けどころか,最先端の革命理論である。
もし,societyが「会社」でなかったとしても,マルクスの次の社会の展望がこの言葉で表されているのは事実である。
株式会社こそは形式的には生産手段の社会化であり,内実の変革があれば,そのまま共産主義(社会主義)になる。共産主義は既に資本主義の中に姿を現しているのだ。
著者が右翼かどうかはどうでもいい。誰か正しい資本論の翻訳をしてもらえないだろうか。