人はなぜ「美しい」がわかるのか 橋本 治著 2002ちくま新書


久しぶりに読み返したい本に出会った。もらった本で,かつトイレ本(トイレで読む本)にしていたのだが,素晴らしい本である。
タイトルから,美学の本かと思ったが,内容はそんなものじゃない。枕草子と徒然草を比べながら自分の体験を交えて,人はなぜ『美しい』がわかるのかを論じている。その本が書かれた歴史背景と,作者の心の中を鮮明に描くことによって,美しく感じる「時」を解明している。作品から作者の気持ちがわかるというのはさすがというしかない。確かに,私の回りには「美しい」がわかる人は少ないような気がする。
なんといってもすごいのは『あとがきのようなおまけ』である。孤独と自立について書いてあるのだが,近代国家が家を基礎にして成立しているのは,近代になりきれていないという指摘は,明確であり,近代批判,国家批判,家族制度批判としてとても有効である。
彼の他の本も読んでみたくなった。