グローバル化と監視警察国家への抵抗―戦時電子政府の検証と批判 小倉 利丸 樹花舎 (2005/4/1)


2005年の本だが,内容は今でも有効である。

各種資料に基づく,戦中戦後の警察組織の変遷。

監視社会を正当化するための,あたかも犯罪が増加しているかのようなマスコミ操作。

犯罪,あるいは定義もされていない「テロ」を根拠とする監視の正当化。それに伴う外国人等に対する差別の助長。

これらの,監視や,統治,販売戦略等が,ITCの発展によって様相を変えて力を持っていく。蓄積されたデータは,権力のある者の恣意的な活用を可能にする。

確かに,インターネットは既成のメディアとは異なり,国家が監視しようとしても仕切れない特性を持っている。逆に,国家は,個人的な情報を含めて,インターネットに流れる情報を無制限に収集することができる。

このおぞましい,人権を知らぬ間に侵害し続けていく社会の「オルタナティブ」は可能なのだろうか。

その可能性はこの本で示唆されてはいる。

しかし,問題となるのは明確な論理及び理論に裏付けられた,実践の可能性である。

実践の形式は,状況や個人によって様々になり得る。それらの個々の運動が緩い横の連携で,常に繋がっていることが必要だと思う。