コンビニ人間 村田沙耶香著 文藝春秋 (2016/7/27)



久しぶりにスッキリとしたいい作品を読んだ。

明確な社会分析と、社会批判、問題提起がある。文体も読みやすいし、構成もいい。

現代は人間科学が発達して、人間制御技術が発達した。それはマニュアルとして実体化している。成文化されていないマニュアルは、人間生活そのものを網の目で覆っている。いわゆる「生政治」だ。

人間が社会生活の中で守らなければならない決まりや習慣は、昔からある。むしろ、人間以前からあるが、意識を持つようになってから意識される慣習と、無意識の慣習に分かれる。

社会に階級ができると、慣習は支配階級に有利なように変容され、やがて成文化されて法となる。

感情を交えず、合理的(?)にマニュアル通りに行動する人間。それが資本主義にとって一番便利であり、有用な人間だ。

しかし、それはもう人間の殻をかぶった機械に過ぎない。資本主義社会には労働者が不可欠だ。しかし、資本はその労働者を排除しようとする。

奴隷制度で、主人は奴隷を排除したように。

主人公は、現代社会に一番適合した行動をしているだけである。それを異常と見る人がいるうちは、まだ希望がある。