砂の女 1964年日 勅使河原宏監督

に忠実である。安部公房が脚本を描いている。彼の戯曲は面白いし、場面的にも制限された劇場のような空間である。

原作の不条理感が実写では岸田今日子の演技も含め引き立っている。

安部公房が描き続けた不条理。それは現実社会そのものである。周りの人はそれを当たり前と引き受けている。あるいはそう見える。

しかし、誰の中にもその不条理に対する葉感のようなものがあり、それを様々な形で表出している。ただ、誰も他人とその不条理の原因、いや不条理そのものを話そうとはしない。お互いに受け入れているふりをすることが面倒ではないし、心身自体がそれに慣れてしまっている。

だが、中にはその不条理と戦おうとするものもいる。不条理を口にも出す。ある意味でそれが無謀な挑戦であると知りながら。

それは少数者ではないかもしれない。あるいは多数者の心身の一部分かもしれない。主人公はその少数者、「小数性」(「特異性」)の表現主体として現れる。それは安部公房自身でもある。

彼が不条理を頭の中だけじゃなく、文字(本)という形で実体化すること、それが不条理の実態を暴き出す力となる。



初公開年月: 1964/02/15
監督: 勅使河原宏
製作: 市川喜一
大野忠
原作: 安部公房
脚本: 安部公房
撮影: 瀬川浩
美術: 平川透徹
山崎正夫
音楽: 武満徹
出演: 岡田英次
三井弘次
岸田今日子
伊藤弘子
矢野宣
関口銀三
市原清彦