夢診断 秋山さと子著 1981 講談社現代新書

夢診断 秋山さと子著 1981 講談社現代新書

 一人の学者が、夢と接しながら学問と自分自身に目覚めていく過程が描かれている。ユングに対する世間の偏見もさりげなくかわしている。そういう意味ではいいユング入門書でもある。夢の可能性と怖さが自らの体験を通じてうまく表現されている。彼女の生き方まで伝わってくる自伝的な作品である。


Fri Nov 29 00:24:52 2002



⟨impressions⟩

It depicts the process of a scholar awakening to scholarship and himself while interacting with dreams. The public prejudice against Jung is also casually evaded. In that sense, it is also a good introduction to Jung. The possibilities and fears of dreams are well expressed through their own experiences. It is an autobiographical work that conveys her way of life.


Fri Nov 29 00:24:52 2002




[出演者(プロフィール)]

秋山さと子

1923年東京に生まれる。文化学院、駒沢大学仏教学部を経て、1964年から68年までユング研究所に在籍。1992年、逝去。著書に、『聖なる次元』――思索社、『子どもの深層』――海鳴社、『さとりの分析』――朝日出版社、『いい女への旅立ち』――祥伝社、『ユングの心理学』『ユングの性格分析』『ユングとオカルト』――いずれも講談社現代新書――などがある。



永遠の時間と無限の宇宙を駆けめぐる夢は人間の意識と無意識の対話といえよう。心の奥に沈むエモーションはひきだされ、よろこびやかなしみの感情はドラマとしてあざやかに定着する。本書はシャドウ、ペルソナ、アニマ、アニムス、太母、老賢人などユングの元型のイメージや集合無意識の考えを駆使しながら一人芝居としての夢をあざやかに診断していく。漱石の夢、更級日記の夢、未開部族の夢などとともにユング研究所以来の著者自身の夢ノートをてがかりに、暗く、抑圧された衝動の表現としてではない人生をより豊かにしていく夢の可能性を語る。

夢と遊んでみる――最近、ヨーガや禅などを好み、実践的な精神的修行の一つとして、夢に興味をもつ若い人たちが増えている。そして、マンダラや仙人や大女神の夢を見る人たちも多い。その結果として、インドやネパールに出かけたり、世界を駆けめぐる計画を立てる人もいる。それは若さと深くかかわる自我膨張の一つかもしれないということは知ってほしい。それでもなお、山に籠ったり、外国へ出かけたい人たちを、わたしはとめる気はない。なにごとも計算ずくめで、若さを失なった感動なき人々に比べれば、はるかにましだと思うからである。夢は考えだすと、やめられないほどおもしろい。ただ夢を考える時は、夢の世界に呑みこまれないように、しっかりとした自分をもってほしい。いつか、夢にそれこそ夢中になって、おかげで試験勉強に手がつかずに、落ちてしまったなどと文句をいっていた若ものもいたけれど、そこまでわたしは責任をもつ気はない。――本書より




[ ISBN-13 : 978-4061456136 ]


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