リナックスの革命 ハッカー倫理とネット社会の精神 ペッカ・ヒマネン、リーナス・トーバルズ、マニュエル・カステル著 安原和見、山形浩生訳 2001 河出書房新社

リナックスの革命 ハッカー倫理とネット社会の精神 ペッカ・ヒマネン、リーナス・トーバルズ、マニュエル・カステル著 安原和見、山形浩生訳 2001 河出書房新社
 ハッカーの労働観は、労働と余暇の止揚である。それは彼らが特殊な技術を持っているからできることであるが、現代の労働観に対するアンチテーゼとしては大きな意味がある。

 労働に反対する運動としてヒッピームーブメントがあったが、それはアナーキスティックなものであった。それは、未来像を描けない運動であった。それに対して、ハッカー倫理は生産的でありながら反資本主義的である。その上社会的であるのだ。社会はハッカー倫理を認める方向に進むであろう。ただし、限られた層の人間に対してである。そしてそれらを資本主義の内部に取り込もうとするであろう。それに対するしっかりとしたノーを表明するのもハッカー倫理である。

 それぞれが、それぞれの得意分野でハッカーになる。それが共産主義以外の何者であろうか。



Tue Oct 14 21:18:28 2003



⟨impressions⟩

The hacker's view of labor is the suspension of labor and leisure. This is possible because they have special skills, but it has great significance as an antithesis to the modern view of labor.

There was a hippie movement as a movement against labor, but it was anarchic. It was a movement that could not draw a future image. Hacker ethics, on the other hand, are productive yet anti-capitalist. Besides, it is social. Society will move in the direction of recognizing hacker ethics. However, it is for a limited number of people. And they will try to get them inside capitalism. It is also hacker ethics to express a firm no to it.

Each becomes a hacker in their respective fields of expertise. Who is it other than communism?



Tue Oct 14 21:18:28 2003




[出演者(プロフィール)]

ヒマネン,ペッカ
1973年、フィンランド生まれ。20歳でヘルシンキ大学哲学博士号取得。現在、ヘルシンキ大学教授、カリフォルニア大学バークレー校客員教授。4冊の本を出版しており、’98年には哲学学習CDロムで、ECの学習用マルチメディアの年間最優秀賞であるEuroPrix賞を受賞。また、インターネット大学のプロジェクト「ネットアカデミー」のディレクターでもある。本国フィンランドでは自分のテレビ番組を持ち、教育庁にコンピュータ教育のアドバイスを行っている才人

トーヴァルズ,リーナス
1969年、フィンランド生まれ。ヘルシンキ大学在学中の’91年に、Linuxを開発、世界中にオープンソース運動を巻き起こした。コンピュータ界で最も崇められているカリスマ的存在

カステル,マニュエル
カリフォルニア大学バークレー校社会学部教授。情報社会学の第一人者



ハッカーたちが、未来を変える。
ポスト資本主義の精神を徹底的に分析した、ネット・エイジに贈るバイブル!

 組織の力に頼ることなく、「個」で勝負する時代。問題は、従来の価値観の中で競うことではなく、21世紀という時代を生きるスピードだ。常識にとらわれない新しい価値観やアイディアを、素早く実現できるのか。変化に迅速に対応できるのか。
 それを、軽々とやってのけているのが、ハッカーたちだ。
 10年前、ひとりの学生(であり、バリバリのハッカー)の発想から生まれたオープンソース・フリーソフトウエアの リナックス。今、新たなビジネスモデルとして世界中から注目されている。
 この本の中で、創始者リーナス・トーヴァルズはこう語る。
 「楽しくなくちゃ、仕事じゃない。真剣に遊ぶ、これがいいんだ」
 ハッカー=リナックスに代表される、ネット社会の仕事とお金の新しい哲学が必要だ。
 もちろん、誰もが気づいている。終身雇用が崩れ、大企業が崩れ、自分が何のために働き、何のためにお金を得て、何のために生きるべきかを考える時がきている、と。
 著者のヒマネンは、インターネットとウエッブ(併せてネットと呼ぼう)が基盤となっているこれからの社会で、「ハッカー」とは、情報を皆がシェアすることがポジティブなことであり、オープンソースのプログラムを発展させることこそが命題と考えその義務を果たす人のこと、と定義し、さらにコンピュータに限らず何かに熱中することができる人こそ、ハッカーと呼ぶにふさわしい、としている。
 この定義をもっと拡大解釈すると、何が見えてくるだろうか。ハッカーたちの挑戦は何を意味するのだろうか? ハッカーの論理でこの情報化社会を見ると、労働に対する新しい倫理観が見えてくる――いわば、マックス・ウェーバーの『プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に対する21世紀の『ハッカーの倫理とポスト資本主義の精神』が見えてくる。
 ハッカーたちの社会に対する挑戦は、仕事に対する価値観の他に、お金に対する倫理観もある。ハッカーたちが活動する動機は、必ずしもお金ためだけではない。何かを創りだすこと、それがもたらす楽しみのため、などがある。もうひとつは、ネットで自由に表現をすること=すべてのネットへの自由なアクセス――ネシック(ネット倫理、とでも呼ぼう)にある。この3つ――労働に対する価値観、金銭に対する価値観、ネットの倫理――が、本書の3つの大きなテーマである。
 この本は、リーヌスの友人でもあり、20歳の若さでヘルシンキ大学哲学博士号をとり、現在、28歳にしてカリフォルニア大学バークレー校の客員教授であるペッカ・ヒマネンと、全米の情報社会学の重鎮、マニュエル・カステル、そしてリーナスの3人が、1998年同校のシンポジウムでこのテーマについて意気投合し、始まった企画だ。論理は明快で、その姿勢は、ポジディブ。まさに、ネット・エイジのバイブル的書物である。




[ ISBN-13 : 978-4309242453 ]


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