木をかこう ブルーノ・ムナーリ著 須賀敦子訳 1982/04/01 至光社国際版絵本

 木をかこう ブルーノ・ムナーリ著 須賀敦子訳 1982/04/01 至光社国際版絵本
彼は多彩な人だと思います。

木は、規則性でできています。規則性は環境に応じて現象形態を変えます。偶然性や「かわりもの」もあります(ノイズですね)。規則に従えばアルファベットや紙でも木を描くことができます。

私は考えました。それなら、規則に則って文で木をかけば「木の小説」ができる。音で木をかけば「木の音楽」ができる。色彩や光で木をかけば「木の絵ができる」(笑)。

人で木をかけば「木の社会ができる」?ちょっと待て、これってまさしく構造主義じゃない?

そこで、彼の作品の略歴をたどってみました。私が思ったのは、彼は反芸術、非芸術に向かったわけではない。常にその時にやりたいことをやっただけなんじゃないか。そして、その根底に流れるのは、ある種伝統的な西洋論理主義、規則性なんじゃないかということです。規則、バランス、単純な図形等、まさしくピタゴラス由来のものです。「読めない本」はちょっと違いますが。

「読めない本」「役に立たない機械」は題名からすると反合理主義的に見えますが、まったく合理主義的であり、緻密な計算で成り立っていると思います。

「意図」がない作品はありません。ゴミで作品を作っても、既製品で作品を作っても、そこには素材を選んだ強い意図があります。「反芸術」「反美」も意図です。

「役に立たない機械」なら、藤原麻里菜の作品のほうがずっと面白いです。



⟨impressions⟩

I think he is a versatile person.

The tree is made of regularity. Regularity changes the form of the phenomenon according to the environment. There are also chances and "alternatives" (noise). If you follow the rules, you can draw trees with the alphabet or paper.

I thought. Then, if you hang a tree in a sentence according to the rules, you can make a "wooden novel". You can make "wooden music" by playing wood with sound. If you hang a tree with color and light, you can make a picture of the tree (laughs).

Is it possible to create a tree society by hanging trees with people? Wait a minute, isn't this just structuralism?

So, I traced the biography of his work. I thought he wasn't going for anti-art or non-art. You just did what you wanted to do at that time. And at the root of it is a kind of traditional Western logicism, regularity. The rules, balance, simple shapes, etc. are exactly derived from Pythagoras. "Unreadable books" are a little different.

"Unreadable books" and "useless machines" look anti-rationalistic in their titles, but they are completely rationalistic, and I think they are made up of precise calculations.

There is no work without "intention". Whether you make a work with garbage or a ready-made work, there is a strong intention to choose the material. "Anti-art" and "anti-beauty" are also intended.

For "useless machines," Marina Fujiwara's work is much more interesting.




[出演者(プロフィール)]

作者:ブルーノ・ムナーリ 1907年ミラノ生まれ。 「役に立たない機械」(ローマ近代美術館)と、「読めない本」(ニューヨーク近代美術館)の発明者。 ハーバード大学でデザインと視覚コミュニケーションを教える。ブレーラ美術館(イタリア、ミラノ)の 子どもたちの実験室を創案。まだ字を読めない子どもたちのための「はじめての本」を創案(パリ、ボウブール に展示)。ニューヨーク、サイエンス・アカデミーより子どものための本の選外佳作賞を受賞。 幼稚園の子どもから大学を卒業したデザイン専門家までのための美術教育とビジュアル・コミュニケーションの 教育法改革に取り組む。1988年9月逝去。

訳者:須賀敦子 1929年兵庫県生まれ。 聖心女子大学卒業。著書に「ミラノ 霧の風景」(女流文学賞、講談社エッセイ賞受賞)、「トリエステの 坂道」など多数。訳書にナタリア・ギンズブルク「ある家族の会話」、アントニオ・ダッブッキ「インド 夜想曲」など。 ブルーノ・ムナーリ氏との仕事は「木をかこう」と「太陽をかこう」(至光社刊。 1998年3月逝去



イタリアが生んだ世界的アーティスト、ブルーノ・ムナーリによる木の描き方の本。 ムナーリはデザイナーとしての活動のほか、子どものための絵本や遊具を制作するなど、造形教育にも深く関わりました。 緻密なデザイン性をもとに柔軟な感覚を取り入れるムナーリの視点で展開されるこの本は、子どもの観察力を養うだけでなく、大人やクリエイターにも新しいものの見方を示してくれることでしょう。 随筆家としても知られるイタリア文学者・須賀敦子の訳がムナーリの魅力をさらに引き出しています。




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[ ISBN-13 : 978-4783401322 ]


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