スマホ脳 アンデシュ・ハンセン著 久山葉子訳 2020/11/20 新潮新書

スマホ脳 アンデシュ・ハンセン著 久山葉子訳 2020/11/20 新潮新書

"Skärmhjärnan : hur en hjärna i osynk med sin tid kan göra oss stressade, deprimerade och ångestfyllda 2019/03/01"の訳です。

とても面白い本です。ふんふん、とうなずくことで埋まっています。基本は、「脳は1万年前と変わっていない」ので、その脳がIT全盛の現代でどうふるまうか、ということです。脳は「スマホ脳」ではなく「古代脳」のままですから。なぜ、スマホを見ずにはいられないのか、そしてそれがどういう影響を与えるのかを、脳科学、心理学、ホルモンなど生理学で見事に描き出しています。著者は神経科医です。

それは、あくまでも人間の側から見た人間の説明です。それも必要でしょう。人間も自然の一部ですから。それはそこから人間以外の自然に向かうのでしょう。人間を解明するという努力は有史以来続けてきていますが、きっと終わりません。終わるかもしれませんが、その頃には人間が生き残る環境はなくなっているでしょう。

地球にとって見れは、人間という(厄介な?)種がいなくなっても、その場所は違う種が使うか、新しい種が使うかということなのです。「魚の〜が絶滅した」「植物の〜がなくなった」、といってもエコロジストや生物学に興味のある人以外は「ふ〜ん」と思うだけかもしれません。

中には「そんなのクローン技術で作ればいいじゃん」と思う人もいるかもしれません。今の科学万能主義社会では、そういう考えも通じますね。「ドードー鳥」や「ナウマンゾウ」のクローンによる再生の研究は進んでいると思います。トキ(朱鷺、ニッポニア・ニッポンNipponia nippon)が中国産のトキと人工繁殖を行う時、私は違和感を覚えました。中国産のトキは「外来種」ではないそうですが、そもそも外来種とは何でしょうか。日本の日本人と言われる人は外来種でしょうか、在来種でしょうか。

人間が絶滅したら困る、と思うのは自分が人間だからですよね。つまり、自分が死ぬのは嫌だ、ということの延長です。日本産のトキが死んだら悲しいのも、見たことがない「〇〇国の〇〇」が絶滅するのが残念なのも、地球環境が壊れてしまうのを恐れるのもその延長にあります。

スマホの問題も、単に自分や子どもたちの体を心配するだけじゃなく、それによって壊される自然(メアメタルや、石油資源、人間の体も含みます)の問題でもありますよね。それが関わっているのは経済の問題です。

著者が言うように、それは人間が「新しいテクノロジーに適応すればいいと考える人もいるが、私は違うと思う。人間がテクノロジーに順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべき」(P.14)なのです。

問題としているのは「テクノロジー」です。彼は上記の引用文でもわかるように、テクノロジーそのものを否定しているのではありません。そのあり方であり、それに対する対応の仕方です。その方法は本書にたっぷり詰まっています。

「スウェーデンでは2〜3歳の子供のうち、3人に1人が毎日タブレットを使っている。まだろくに喋ることもできない年齢の子供がだ。一方で、スチーブ・ジョブスの10代の子供は、iPadを使ってよい時間を厳しく制限されていた。ジョブズは皆の先を行っていたのだ。テクノロジーの開発だけでなく、それが私たちに与える影響においても。」「ビル・ゲイツは子供が14歳になるまではスマホは持たせなかったと話す。」(P.82)どう思いますか。

本書が刊行されたのは2019年。日本語訳には2020/04/17付の「コロナに寄せて ー 新しいまえがき」がついています。著者の関心の深さが伺えます。本文でも、「社交生活の代わりにSNSを利用する人たちは、精神状態を悪くする。」(P.148)「映画のスクリーンやパソコンのモニターで何かを見ても、他人の考えや気持ちを本能的に理解する生物学的メカニズムに同じだけの影響はない。」(P.152)などの指摘があります。

コロナ禍の今だからこそ、「お家生活」が長い今こそ読むべき本だと思います。

この本を読んで、いくつかの疑問ができました。その一つを書きます。「セロトニン」の話です(P.138−)。地位の高低との話なのですが、太陽を見上げるとなんか神々しく感じますよね。高い山を見たときも。古来から権力者は「高い」ところにいます。「高い」という表現そのものが表していると思いますが、人間(を含む多くの動物)は上を見るとセロトニンの分泌量が減るのではないでしょうか。どなたか教えて下さい。



⟨impressions⟩

It is a translation of "Skärm hjär nan: hur en hjärna i osynk med sin tid kan göra oss stressade, deprimerade och ångestfyllda 2019/03/01".

This is a very interesting book. Hmm, it's filled with nods. The basic idea is that "the brain hasn't changed from 10,000 years ago", so how that brain behaves in the modern age of IT. The brain remains an "ancient brain" rather than a "smartphone brain." Why you can't help but look at your smartphone, and what kind of effect it has, is beautifully depicted in physiology such as brain science, psychology, and hormones. The author is a neurologist.

It is just a human explanation from the human side. You will need it too. Humans are also a part of nature. It will go from there to nature other than humans. Efforts to elucidate humans have been ongoing since recorded history, but they will never end. It may be over, but by that time there will be no environment for humans to survive.

What we see for the Earth is whether a different species or a new species will use the place, even if the human (troublesome?) Species are gone. "The fish are extinct" and "the plants are gone", but unless you are an ecologist or an interested person in biology, you may just think "Hmm".

Some people may think, "I should make it with such cloning technology." In today's Scientist society, that kind of idea can be understood. I think that research on the reproduction of clones of "Dodo bird" and "Naumann elephant" is progressing. When the crested ibis (Nipponia nippon) artificially breeds with Chinese crested ibis, I felt uncomfortable. It seems that Chinese crested ibis is not an "alien species", but what is an exotic species in the first place? Is the person who is said to be Japanese in Japan an exotic species or a native species?

I think it's a problem if humans become extinct because I'm human. In other words, it's an extension of the fact that I don't want to die. It is an extension of the sadness of the death of Japanese crested ibis, the disappointment of the extinction of the unseen "○○ of the country", and the fear of destroying the global environment.

The problem with smartphones is not just about worrying about yourself and your children's bodies, but also about the nature (including maremetal, oil resources, and the human body) that is destroyed by it. It is an economic issue that is involved.

As the author says, it is that humans "think that some people should adapt to new technology, but I think it is different. Technology should adapt to us, not humans." It is P.14).

The problem is "technology". He is not denying the technology itself, as you can see in the quote above. That's how it should be, and how to deal with it. The method is fully packed in this book.

"In Sweden, one in three children aged two to three use tablets every day. Some children are still too old to speak. Meanwhile, Steve Jobs' teenagers The time to use the iPad was severely limited. Jobs was ahead of everyone. Not only in the development of technology, but also in the impact it has on us. "" Bill Gates has children He says he didn't have a smartphone until he was 14 years old. "(P.82) What do you think?

This book was published in 2019. The Japanese translation includes "Send to Corona-New Preface" dated April 17, 2020. You can see the depth of interest of the author. Even in the text, "People who use SNS instead of social life worsen their mental state." (P.148) "Looking at something on a movie screen or a computer monitor." However, it does not have the same effect on the biological mechanism that instinctively understands the thoughts and feelings of others. ”(P.152).

I think that it is a book that should be read now that "house life" is long because of the corona disaster.

After reading this book, I had some questions. I will write one of them. This is the story of "serotonin" (P.138-). It's a story of high and low status, but when you look up at the sun, it feels divine. Even when I see a high mountain. Since ancient times, those in power have been "high". I think that the expression "high" itself expresses it, but human beings (many animals including) may reduce the amount of serotonin secreted when looking up. Please let me know.




[出演者(プロフィール)]

アンデシュ・ハンセン(Anders Hansen) 精神科医。ノーベル賞選定で知られる名門
カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取
得。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務し
ながら執筆活動を行う傍ら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメ
ディア活動を続ける。前作『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が
売れ、その後世界的ベストセラーに。

久山葉子(くやま・ようこ 1975年兵庫県生まれ。翻訳家。エッセイスト。神戸女学
院大学文学部英文学科卒。スウェーデン大使館商務部勤務を経て、現在はスウェーデ
ン在住。



平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だがスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか?睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存―最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。教育大国スウェーデンを震撼させ、社会現象となった世界的ベストセラーがついに日本上陸。

『一流の頭脳』の著者が脳科学の最新研究から
明らかにする恐るべき真実
世界的ベストセラー、日本上陸!

・わたしたちは1日平均2600回スマホに触り、10分に1回手に取っている
・現代人のスマホのスクリーンタイムは1日平均4時間に達する
・スマホのアプリは、最新の脳科学研究に基づき、脳に快楽物質を放出する
〈報酬系〉の仕組みを利用して開発されている
・10代の若者の2割は、スマホに1日7時間を費やしている
・1日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高める
・スマホを傍らに置くだけで学習効果、記憶力、集中力は低下する
・世界のIT企業のCEOやベンチャー投資家たちの多くは、わが子のデジタル・デバイスへのアクセスを認めていないか極めて厳しく制限している
・フェイスブックの「いいね! 」の開発者は、SNSの依存性の高さはヘロインに匹敵する」と発言している

etc,etc...。

本書を手に取り、ぜひお確かめください。




生物種を絶滅させるには、全個体を殺す必要はありません。一定数以下にすれば、自然と絶滅します。地球そのものが多様性で成り立っているのと同じように、個々の種も多様性で成り立っています。同じ遺伝子では存続できないのです。クローン技術で個体を作ることはできるでしょう。今までありえなかった生物を作ることの可能です。でも種を作ることはできません。大切なのは個体ではなく「多様性」なのです。まあ、遺伝子は変異を繰り返しますから、そのうち多様性を作り出す可能性はありますが。

Mon Jan 25 2021 23:45:13 (JST)


サテライトオフィスのCMに篠崎愛ちゃんが出ていました。かわいい。

別のモーニング番組では「自動で開くゴミ箱」を紹介していました。蓋が自動で開く便器に驚いたことがあったなあ。蓋ぐらい自分で開けよ、と思っちゃいます。その後で「運動不足にはこれ」といったCM。どうなっているんでしょうね。この本の著者も、最後で「デジタル時代のアドバイス」を書いていますが、「運動」を重視しています。前作『一流の頭脳』(著者が『アンダース・ハンセン』となっていますが、英語読みでしょう)でも、運動の重要性を説いているそうです。読まなくちゃ。

Tue Jan 26 2021 00:15:55 (JST)

<抜粋>

「不確かな結果への偏愛。」P.76

「ファイスブックやインスタグラム」などの「企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇っている。そのアプリが極力効果的に脳の情報システムを攻撃し、最大限の依存性を実現するためにだ。金儲けという意味で言えば、私たちの脳のハッキングに成功したのは間違いない。」P.78

「依存性ではヘロインに匹敵する」
「どんな人がスマホ依存症になるのか」「自尊心は低いが競争心が強く、自分を強いストレスにさらしている人たちだった。」(P.79)

注意残余(attetion redidue)「再び元の作業に100%集中できるまでには何分も時間がかかるという。」「余談だが、基本的に女性の方が男性よりもマルチタスクに長けているそうだ。」(P.89)

「記憶するためには、集中しなければならない。」(P.100)

「保存されるとわかっていれば、情報そのものよりも、情報がどこにあるかを覚えておくほうがいい。(脳は近道が大好き P.103)

「写真を撮っていない作品はよく覚えていたが、写真を撮った作品はそれほど記憶に残っていなかった」「人間には知識が必要なのだ。社(P.104)会と繋がり、批判的な問いかけをし、情報の正確さを精査するために。」「情報をその人の個人的体験と融合させ、私たちが「知識」と呼ぶものを構築するのだ。」「本当の意味で何かを深く学ぶためには、集中と熟考の両方が求められる。」(P.105)

「無視するというのは能動的な行為なのだ。」(P.107)

「ストレスは脅威そのものが引き金になるが、不安は脅威かもしれないものが引き金だ。」(P.115)

「オックスフォード大学の進化心理学者ロビン・ダンバーは人間はおよそ150人と関係を築けると考えている。」「この数はダンバー数と呼ばれている。」(P.133)

「人間は先天的に、自分のことを話すと報酬をもらえるようになっている。」(P.135)

「誰かが目の前にいると、私たちは自分の行動を制限できる。相手の表情や身振りが目に入るからだ。」(P.139) ー ネトウヨ

デジタルな嫉妬「「よい人生とはこうあるべきだ」という基準が手の届かない位置に設定されてしまい、その結果、自分は最下層にいると感じる。」(P.143) ー idol->身近になる(ほど)ことで自分が劣っていることになる。=>自分の地位を落とすためのアイドル。それで自分を肯定して安心する?

「珍しいバカンスや高級グルメの写真に集中砲撃されると、短時間でも人生への満足度が下がる可能性があるのだ。(P146)

「消極的なユーザーは、積極的なユーザーよりも精神状態が悪くなりやすいようだ。」(P.147)

「他人を理解したいという生来の衝動は心の理論(theory of mind)と呼ばれる。」(P.151)

「心理学者のジーン・トゥウェンギーやキース・キャンベルは若者の行動を調査し、「ナルシズムという伝染病」がいかにしてSNSの誕生と共に広がったのか、なぜ自分のことばかりが気になり、他の人のことはどうでもよくなったのかを論じている。」(P.153)「80年代から共感力が下がっていた。特に2種類の能力が悪化している。共感的配慮という、辛い状況の人に共感できる能力、それに対人関係における感受性だ。これは別の人間の価値観にのっとり、その人の視点で世の中を見る能力だ。」(P.154)

「事故に出くわしたら、救助するよりも撮影するためにーーフェイスブックで「いいね」の数を稼ぐためにーースマホと取り出す人がいるのはそのせいだろうか。」(P.154)

(P.160) ー 「しない」戦い(char)

「狩猟採集民のうち10〜15%が、別の人間に殺されていたと言われている。原始的な農業社会になってからはさらに悪化し、5人に1人だ。おそらく、いい争いの種が増えたのだろう。」(P.162) ー 出典は?

「フェイスブックのタイムラインに流れてくるニュースは、コンピューターのアルゴリズムが選んだものだ。つまり、拡散される記事に書かれていることが真実かどうか、そこに責任を持つ編集局はフェイスブックには存在しない。」(P.164)

(P.179) ー ASD

「テクノロジーで退化しないために」「「ほんの始まり」に過ぎない」





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[ ISBN-13 : 978-4106108822 ]

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