LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア著 ,マシュー・D・ラプラント共著 梶山あゆみ訳 2020/09/29 東洋経済新報社

LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア著 ,マシュー・D・ラプラント 共著 梶山あゆみ訳 2020/09/29 東洋経済新報社
LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界 "Lifespan : why we age--and why we don't have to" 2019/09/10

「なぜ老いるのか、なぜ老いなければばならないのか」

じゃない。「〈老い〉なくたっていいんじゃない?」

話題になった本です。

最近(というか、いつでも)本を読むたびに「なるほど。そうか。」と納得してしまいます。まったく節操がありません。「日和見読書」とでも言うのでしょうか。私が歳をとって「謙虚」になったのかもしれません。(笑)

仕事をやめて、引きこもってから体調が変です。長年飲み続けた抗うつ剤、睡眠薬を止め、目薬も、胃腸薬も止めました。

結果、頭がスッキリしない、眠れない、ゲップが大量に出る、目が乾く・・・ひどいです。パソコンの前に座って、体を動かさないのですから当然です。

ボーヴォワールの『老い』を読んで、「そうだよなあ、歳を取るってそういうことだよなあ」と落ち込んでいたのですが、図書館に予約していたこの本をやっと(数ヶ月かかりました)読むことができました。

老いは病

目次をみて「やばい本だな」と思いました。「ひきこまれたら、もどれなくなる」と感じたのです。

実際に読んでみて、専門的なことはわかりませんが、著者は誠実な人だな、と感じました。論理的には間違っていなんじゃないかと。

そして、「老化は疾病である」(2010年イギリス王立協会)という言葉に安心しました。体の不調が、運命でも「仕方がない」ことでもないということですから。

先日、映画「SPEC」を観ていたら登場人物が「父が不治の病なんです」「なんの病ですか?」「老衰です」というシーンがありました。ギャグだと思いますが(わたしも笑ってしまいました)、堤さんは真面目だったのかもしれません。だとしても、それがギャグになるのは一般には「老化は防ぎようがないもの」「自然なもの」だと思われているからです。

著者は「不死」を目指しているのではありません。「不老」を求めて研究を続けているのです。2018/06/18に『国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)』が公表されました。その項目「MG2A」が「老齢」の疾病コードです。来年(2022年)1月1日からは老齢が病気だと世界的に認められることになります。

この本の執筆には10年かかったとありますから、この公表が出版のきっかけになったのかもしれません。

病気であれば、治療することになります。でも、著者が目指している老化を治す薬は現在のところ有りません。風邪だって、治療薬はありません。解熱剤や、咳止めは症状を抑えるだけで、風邪という病気を治すわではありません。発熱や咳は風邪のウィルスに対する体の反応です。風邪を治すのは自分の体です。病状は「いま、ウィルスと闘ってるよ。安静にしてね。」という体の信号です。薬の多くはそういうものです(抗生物質は別です)。

老化に対する薬

著者が目指している「老化を止める薬」「若返りの薬」はどうでしょう。その仕組は丁寧に書かれていますが、治ろうとする体を助けるものなのか、原因を除いてしまうことなのか、微妙です。

それは、著者の考え方、自然観によると思います。著者は「遺伝子組み換え(あるいは編集)食物」も自然だといいます。著者にとっては文明も自然なのです。飛行機も、パソコンもペットも自然です。そう言ってしまえば「反自然(不自然)」なものなどなくなります。著者は「貧富の差はなくすべきだ」といいます。多分それは、「自然」かどうかではなくて、「倫理」の問題なんでしょうね。そして、それは「論理」の問題と同一視されているように思います。

著者は「タバコは吸わない。電子レンジにかけたプラスチックや、過度な紫外線や、レントゲンやCTスキャンを避けるようにしている。」(P.476)といいます。なぜ、避けるのでしょう。「遺伝子が破壊されるから」ですね。「自分が老化するから」です。それは、まさしく「恐れているのは命を失うことではなく、人間性を失うこと」(P.443)なのではないでしょうか。それは、「人間性」ではなく「自己(自我)」を失うことに対する恐れです。

エントロピー

そもそも「老い」を無くすことは可能なのでしょうか。

すべてのものは、いずれ壊れます。「エントロピー増大の法則」ですね。家も自動車も、机や椅子も、いずれ壊れます。動物も植物も壊れます。つまり、「死」にます。人間も例外ではありません。

「老化」が「だんだん壊れていく」ことだとしたら、それは止めることができません。だから、老いることは「仕方のないこと(have to)」だと思ってしまうのです。

でも、エントロピー増大の法則は「閉鎖系」であることが条件です。たとえば、部屋の中を片付ければエントロピーは減少します。でも、その減ったエントロピー以上のものが外に捨てられます(たとえば「ゴミ」として)。生物の内部もその法則は働いています。それでも生物が簡単に壊れてしまわないのは、絶えずエントロピーを排出して、内部のエントロピーを下げているからです。それこそが生物と無生物を分けることだと思っています。そのエントロピーの排出を行わなくなったとき、それが「死」です。

本書のなかで、「エピゲノム」「リセット」というように呼ばれているものはまさしくその「エントロピー」のことではないでしょうか。

ぎゃくに、エントロピーを排出し続けることができれば、「生きて」いられます。エピゲノムの「情報」の「ノイズ」「きず」あるいは「がん」を排出していけば、内部のエントロピーは低いままでいられるのです。

私たち「変温動物」が熱を出す(放出する)というのはまさしく、この現象です。熱を出さなくなったとき(冷たくなったとき)、その時が「死」です。

全体と部分

閉鎖系としてみるということは、〈全体〉をみるということです。エントロピーの観点から見れば、個人(あるいは生物個体)は系の一部です。つまり、〈全体〉あるいは〈社会〉から見ると一部ということです。

彼が「人間は全体の利益を考えて行動するのがあまり得意ではない。」(P.328-329)と言うとき、全体と部分を措定して、部分が優先されるということを言っているのです。これは決して「人間一般」の特徴ではありません。〈私〉〈自己〉〈自我〉〈自分〉〈アートマン〉・・・等の存在を優先する社会の特徴です。「我思う故に我あり」的社会です。そこでは、〈外部〉、つまり〈社会〉や〈自然〉が設定され(〈客体〉)、それらは〈自己〉に対立するもの、克服すべきもの、所有可能なもの、〈統治〉(〈支配〉)するもの(すべきもの)として現れます。自分の体も〈対象〉となります。そして自分の〈心〉も。『自己への配慮』が必要となる社会です。

「ゴミ」の問題、「原発処理水の放出」の問題も、どこまでを〈私〉と置くかの問題です。

著者が目指しているもの、実践していることはこの『自己への配慮』ですよね。それは、キリスト教の修道院や仏教の寺院での生活と似ていないでしょうか。

いまAV(アダルトビデオ)を観ていますが、〈性〉が『自己への配慮』となる社会が見事に表現されています。

〈自己〉は決して「自己完結」しません。〈部分〉が〈全体〉になることは「幻想」(夢、希望、あるいは目標)でしかないからです。ですから、そこに〈他人〉に対する強制が発生します。「それがないところを想像できないような何か」(P.329)です。それを「正義」や「平等」や「民主主義」と置き換えてもいいし、「新型コロナウィルスワクチン」や「科学技術」「携帯電話」あるいは「利便性」と置き換えてもいいですが。

そして、それを支えるのが、「記録する」ということです。「記憶」ではありません。この本に近づければ、前者が「ゲノム」で後者が「エピゲノム」です。

「デジタル」と「アナログ」と表現するのもこの本から当然可能です。それを「静止」と「運動」ということもできます。

著者は科学者です。科学に必要なのは「記憶」ではなくて「記録」です。記録は蓄積されます。著者が言う「文化」はその「記録の蓄積」です。記録は溜り始めるとすぐに記憶を超えます。少なくとも超えるように思われます。そこに「学問」や「専門家」が現れ、優位に立ちます。私にはこの本を理解することができません。この本を理解できる人は億万長者位の割合か、それ以下でしょう。それ以外の人は「信じて」「NMN、レスベラトロール、メトホルミン」をネット通販で探すか、「トンデモ本」として無視するしかないのです。

〈私〉を「世界の中心」として認めてしまえば、この本は「画期的な名著」だと思います。


〈書抜〉

「たとえば、通常より思春期を早く迎える少女は、通常より早く進むエピゲノムの老化時計をもっている。」(P.146)__Faster ticking rate of the epigenetic clock is associated with faster pubertal development in girls

「この世界では、私たち全員の意見が一致することなどほとんどないように思えるのに、「仕方がない」という姿勢だけはほぼ万国共通なのだ。」(P.158)

「私たちの遺伝子は、ぬくぬくと快適に暮らすような進化を遂げてはいない。ときどき多少のストレスを与えてもルミシス効果を発揮させることが、長寿への道といえそうである。」(P.204)

「これらの化学物質はその回路が働いた結果として生み出され、厳しい環境に耐えて生き残れと自らの細胞に伝えているわけだ。だとすれば、人間の体はそれを感知できるように進化したのではないか。それが人体にとっても早期警戒警報となり、私たちもまた過剰な細胞活動を抑えて生き延びる必要があると警告してくれのではないか。ホーウィッツと私はそう考えており、この考えを「ゼノホルミシス(xenohormeshis)仮説」と呼んでいる。」(P.231)__植物の擬人化と人間の擬人化

(ビル・ゲイツ)「「自然の気まぐれで発生するのであれ、テロリストの手でばらまかれるのであれ、空気中を高速で移動する病原体は1年足らずで3000万人もの命を奪える。それが疫学者たちの見解です」。」(P.325)「「そして、世界が今後10年から15年のうちにそうした大流行を経験する活率は、決して低くはないと研究者は指摘しています」」(P.326)__BILL GATES: A new kind of terrorism could wipe out 30 million people in less than a year — and we are not prepared "The point is, we ignore the link between health security and international security at our peril. Whether it occurs by a quirk of nature or at the hand of a terrorist, epidemiologists say a fast-moving airborne pathogen could kill more than 30 million people in less than a year. And they say there is a reasonable probability the world will experience such an outbreak in the next 10-15 years."

「この例からもわかるように、人間は全体の利益を考えて行動するのがあまり得意(FF)ではない。革命的な変化を起こす秘訣は個人の利益と全体の利益を一致させる方法を見つけだすことだ。つまり、大規模なバイオトラッキングが必要だと納得してもらうには、何らかのメリットを感じさせてやらないといけない。それがないところを想像できないような何かを。」(P.328-329)__冷蔵庫がない世界、自動車がない世界、スマホがない世界、ワクチン(証明書)がない世界。部分と全体、個人と社会

「自動車に飛行機。ノートパソコンに携帯電話。家で飼われているイヌやネコ。眠るときのベッド。病気の時に人が人の世話をする病院。みんな自然である。ホッブスの有名な言葉を借(FF)りるなら、人生が「孤独で貧しく、不快きわまり、獣じみて短い」状態に留まることで維持されていた人口を、私たちははるか昔に突破した。そんな生物にとっては、どれもが自然なのである。」(P.388-389)

「結局、ほとんどの人が恐れているのは命を失うことではなく、人間性を失うことなのである。」(P.443)__「人間性」ではなく「自我」

「遺伝子組換え作物は「不自然な」植物だとして、世間の風当たりが強い。総批判する人の多くは気づいていないようだが、私たちが「自然」だとする食物の大部分は、じつはすでにかなりの遺伝子操作を施されている。」(P.447)__農耕と品種改良

私が実践していること「とは言え、自分自身が何をしているかであれば公表してもいいと思っている。ただし、いくつかの点を断っておきたい。

あなたのすべきことがこれと同じとは限らない。

がそうしているのが正しのかどうかすら私にはわからない。

・人間を対象にした臨床試験が現在進行中ではあるものの、厳密で長期的な臨床試験がなされた老化の(FF)治療法や療法は1つも存在しない。本来はそれがなければ、起こり得る様々な結果について十分に理解することはできない。」(P.474-475)

NMN1グラム、レスベラトロール1グラム、メトホルミン1グラムを毎朝

ビタミンD、K2

アスピリン83mg

砂糖、パン、パスタを少なく

「研究によると、90歳に達する頃には、ガンに罹患する確率が3分の1に減少している。100歳まで生きると、以後その確率は0〜4%と微々たるものになる。」(原註P.67)




⟨impressions⟩

LIFESPAN: The World Without Old Age " Lifespan: why we age--and why we don ' t have to " 2019/09/10

This is a book that has become a hot topic.

Every time I read a book recently (or anytime), I'm convinced that "I see. That's right." There is no moderation at all. Is it also called "opportunistic reading"? I may have become "humility" as I grew older. (smile)

I've been sick since I quit my job and withdrew. I stopped taking antidepressants and sleeping pills that I had been taking for many years, and stopped eye drops and gastrointestinal pills.

As a result, my head doesn't feel refreshed, I can't sleep, I get a lot of belching, my eyes are dry ... it's terrible. It's natural because you sit in front of your computer and don't move.

When I read Beauvoir's "Old", I was depressed, "Yes, that's what it means to get old." It took me a month) I was able to read it.

Aging is sick

Looking at the table of contents, I thought it was a bad book. I felt, "If you are drawn in, none of them will be gone."

When I actually read it, I didn't know anything technical, but I felt that the author was a sincere person. I think it's logically wrong.

And I was relieved by the words "Aging is a disease" (Royal Society of England, 2010). It means that your physical condition is neither fate nor "unavoidable".

The other day, when I was watching the movie "SPEC", there was a scene in which the characters said, "My father has an incurable illness," "What kind of illness?" And "I'm aging." I think it's a gag (I laughed too), but Mr. Tsutsumi may have been serious. Even so, it becomes a gag because it is generally thought to be "aging is unavoidable" and "natural."

The author is not aiming for "immortality." He continues his research in search of "immortality." "The 11th revised edition of the International Classification of Diseases (ICD-11)" was published on June 18, 2018. .. The item "MG2A" is the disease code for "old age". From January 1st next year (2022), old age will be recognized worldwide as a disease.

It is said that it took 10 years to write this book, so this publication may have triggered the publication.

If you are ill, you will be treated. But there is no cure for aging that the author is aiming for. There is no cure for colds. Antipyretics and cough medicines only control the symptoms, not the illness of the common cold. Fever and cough are the body's reactions to the cold virus. It is your body that cures the cold. The medical condition is a signal from the body that says, "I'm fighting the virus now. Rest." Many of the medicines are like that (except for antibiotics).

Medicines for aging

What about the "drugs that stop aging" and "drugs that rejuvenate" that the author is aiming for? The mechanism is carefully written, but it is subtle whether it helps the body trying to heal or eliminates the cause.

I think it depends on the author's way of thinking and the view of nature. The author says that "genetically modified (or edited) food" is also natural. Civilization is also natural for the author. Airplanes, computers and pets are natural. If you say so, there will be no such thing as "anti-natural". The author says, "The difference between rich and poor should be eliminated." Maybe it's a matter of "ethics", not whether it's "natural" or not. And I think it is equated with the problem of "logic".

The author says, "I don't smoke. I try to avoid microwaved plastic, excessive UV, X-rays and CT scans" (P.476). Why avoid it? "Because the gene is destroyed." "Because I am aging." Isn't that exactly "the fear is not the loss of life, but the loss of humanity" (P.443). It is a fear of losing "self" rather than "humanity".

Entropy

Is it possible to eliminate "aging" in the first place?

Everything will eventually break. It's the "law of increasing entropy". Homes, cars, desks and chairs will eventually break. Animals and plants will break. In other words, "death". Humans are no exception.

If "aging" is "gradually breaking", it cannot be stopped. That's why I think that aging is "have to".

But the law of increasing entropy is conditional on being a "closed system". For example, cleaning up a room will reduce entropy. But more than that reduced entropy is thrown out (for example, as "garbage"). The law also works inside living things. Still, organisms are not easily destroyed because they constantly emit entropy and lower their internal entropy. I think that is what separates living things from inanimate objects. When it stops discharging its entropy, it is "death."

In this book, what is called "epigenome" or "reset" is just that "entropy".

Gyaku, if you can continue to emit entropy, you can "live". By eliminating the "noise", "scratches" or "cancer" of the "information" of the epigenome, the internal entropy can remain low.

Whole and part

To see it as a closed system means to see the . From an entropy point of view, an individual (or an individual organism) is part of the system. In other words, it is a part when viewed from the "whole" or "society".

When he says, "Human beings are not very good at acting in the interests of the whole" (P.328-329), the whole and the part are stipulated, and the part is prioritized. I'm saying that. This is by no means a characteristic of "human beings in general". It is a characteristic of society that prioritizes the existence of "I", "self", "self", "self", "artman", and so on. It is a society where "I am because I think". There, "outside", that is, "society" and "nature" are set (), and they are in opposition to "self", what should be overcome, what can be possessed, "government" ("government"). ) Appears as something to do (what to do). Your body is also a . And my own "heart". It is a society that requires "self-consideration."
What the author is aiming for and practicing is this "consideration for self", isn't it? Isn't it similar to life in a Christian monastery or Buddhist temple?

I'm watching AV (adult video) now, and the society where "sex" is "consideration for self" is beautifully expressed.

is never "self-contained". This is because it is only an "illusion" (dream, hope, or goal) that the "part" becomes the "whole". Therefore, there is a coercion against . "Something you can't imagine without it" (P.329). You can replace it with "justice," "equality," or "democracy," or "new coronavirus vaccine," "science and technology," "mobile phone," or "convenience."

And what supports it is to "record". It is not "memory". If you approach this book, the former is the "genome" and the latter is the "epigenome".

Of course, it is possible to express "digital" and "analog" from this book. It can also be called "rest" and "exercise".

The author is a scientist. What science needs is not "memory" but "record". Records are accumulated. The "culture" that the author says is the "accumulation of records". Records exceed memory as soon as they begin to accumulate. At least it seems to exceed. "Academic" and "experts" will appear there, and you will have an advantage. I can't understand this book. Perhaps the percentage of millionaires who can understand this book or less. Others have no choice but to search for "believe", "NMN, resveratrol, metformin" online, or ignore it as a "Tondemo-bon".

If you recognize as the "center of the world", I think this book is a "breakthrough masterpiece".





[著者等(プロフィール)]

シンクレア,デビッド・A.
世界的に有名な科学者、起業家。老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる。とくに、サーチュイン遺伝子、レスベラトロール、NADの前駆体など、老化を遅らせる遺伝子や低分子の研究で注目を浴びている。ハーバード大学医学大学院で、遺伝学の教授として終身在職権を得ており、同大学院のブラヴァトニク研究所に所属している。ほかにも、ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア・シドニー)の兼任教授および老化研究室責任者、ならびにシドニー大学名誉教授を務める。その研究は、新聞・雑誌、ポッドキャスト、テレビ、書籍などで頻繁に取り上げられている。これまでに170本あまりの科学論文を発表し、50件あまりの特許を共同発明。また、老化、ワクチン、糖尿病、生殖能力、がん、生物兵器防衛などの分野で、14社のバイオテクノロジー企業を共同創業している。科学誌『エイジング』の共同主幹であり、国防関係機関やNASAとも共同研究を行なうほか、これまでに35の賞や栄誉を授与されている。その主なものには、「オーストラリアを代表する45歳未満の科学者」の1人に選出、オーストラリア医学研究賞受賞、アメリカ国立衛生研究所長官パイオニア賞受賞、『タイム』誌による「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出(2014年)、「医療におけるトップ50人」の1人に選出(2018年)、などがある。2018年、医療と国家安全保障に関する研究が認められ、オーストラリア勲章を受章

ラプラント,マシュー・D.
ユタ州立大学で報道記事ライティングを専門とする準教授。ジャーナリスト、ラジオ番組司会者、作家、共著者としても活躍

梶山/あゆみ
翻訳家。東京都立大学人文学部英文科卒



【人類が迎える衝撃の未来!】
人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。
だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。
私たちは不自由な体を抱え、さまざまな病気に苦しめられながら晩年を過ごし、死んでいく。
だが、もし若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか?
いくつになっても、若い体や心のままで生きることができて、刻々と過ぎる時間を気に病まずに、何度でも再挑戦できるとしたら、あなたの人生はどう変わるだろうか?

ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、そのような世界がすぐそこまで迫っていることを示す。
本書で著者は、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。
私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。
老化遺伝子が存在しないように、老化は避けて通れないと定めた生物学の法則など存在しないのだ。
生活習慣を変えることで長寿遺伝子を働かせたり、長寿効果をもたらす薬を摂取することで老化を遅らせ、さらには山中伸弥教授が突き止めた老化のリセット・スイッチを利用して、若返ることさえも可能となるだろう。

では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?
著者によれば、寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても、科学技術の発達によって、人類は地球環境を破壊せずに、さらなる発展を目指すことができるという。

いつまでも若く健康で生きられれば、年齢という壁は消えてなくなる。
孫の孫にも会える時代となれば、私たちは次の世代により責任を感じることになる。

変えられない未来などない。
私たちは今、革命(レボリューション)の幕開けだけでなく、人類の新たな進化(エボリューション)の始まりを目撃しようとしているのだ。

■世界を代表する知識人が称賛!
「鋭い洞察に満ちた刺激的な書だ。広く深く読まれるべき傑作といえる」
――シッダールタ・ムカジー(科学者。ピュリッツァー賞受賞作家。『遺伝子――親密なる人類史』、『がん――4000年の歴史』著者)

「知的好奇心を掻き立ててやまない一冊。じつに興味深い洞察を提供してくれる」
――アンドリュー・スコット(ロンドン・ビジネススクールの経済学教授、『LIFE SHIFT(ライフシフト)――100年時代の人生戦略』著者)

〈内容紹介〉
第1部:私たちは何を知っているのか<過去>

老化の唯一の原因ー原初のサバイバル回路
弾き方を忘れたピアニスト
万人を蝕む見えざる病気


第2部:私たちは何を学びつつあるのか<現在>

あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
老化を治療する薬
若く健康な未来への躍進
医療におけるイノベーション





LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア著 ,マシュー・D・ラプラント 共著 梶山あゆみ訳 2020/09/29 東洋経済新報社

[ ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4492046746 ]

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