比較文化論の試み 山本七平 1976 講談社学術文庫

比較文化論の試み

比較文化論の試み



日本文化の性格をうまく表現した本である。
西洋文化は、セム族の「一」に還元する文化と、イランからの二元論、セム的な裁定法とヘレニズム的多数決原理、による。そして、それらを実現するのは、言葉によって説明するという文化である。
そして、「一」を保つために、物事を対立概念として把握する。それに対して、日本人は対立概念として把握することができず、二元論として、別のふたつのものとして把握する。
これらの発想法の違いは、日本が国際社会の中で生きていくときに常に認識していなければならないものである。そして、相手にも日本文化を理解して貰うような努力が必要である。そのためには、西洋的な言葉で説明することが必要であろう。
しかし、それは日本文化を理解して貰うために必要なのであって、日本的な発想を否定することには直接にはつながらない。
共同体の中には、その共同体の「文化」があるのであって、問題は、共同体同士が関係するときにどのようにコミュニケートするかである。今の社会においては、共同体同士は「商品語」で話をしなければならないのであるが、商品語以外の言葉を今世界各国の多くの人が考えようとしている。そこにコミュニズムの可能性がある。



(2000年記)

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