この作品で、村田沙耶香の世界は個人の世界から「家族制度」へと広がっていく。個人のいちばん身近な社会、そして自分を育てた家族。それは幻想という制度に守られながら、硬直し、機能不全に陥っている。それでも人は、家族にしがみつき、家族を探す。家族に守られることを期待する。
しかし、同時に社会は個人をバラバラにする。地面からも社会からも個人を引き離す。「故郷」と同じように、いや、人間同士の結びつきとしてはそれ以上に致命的な幻想だ。「完全な核家族」などというものはありえないのだ。残念ながら今の日本では、家族以外の制度はない。それから逃れるには、新興宗教ぐらいしかない。そこでも結びつきは「疑似家族」的なものになっている。
それ以外の制度はないのか。ある。世界中に様々な制度が存在しているのだ。しかし、その制度を単純に日本に適用することはできない。社会という幻想(だが実在する)がそれを許さない。
各家族以外の家族制度、その一例を村田沙耶香は「消滅世界」で描くことになる。
