鬱の力 五木寛之・香山リカ 幻冬舎文庫(2008/06/15)

鬱の力 (幻冬舎新書)私が『鬱』になってから三十数年が経ちます。

何年かはその『鬱』と戦おうとしてもがき苦しみました。

しかし、ある時点から「戦う」のをやめ、『鬱』と一緒に生きることにしました。

どうせ治らないなら、付き合っていくしかないという諦めもありましたし、この世の中で「鬱」や「統合失調症」にならないほうがおかしいという気持ちもありました。

そして、自分の意に反して「仕事」をしているうちは治らない、「仕事」をやめれば治るかもしれないという希望もどこかにありました。

そして「仕事」をやめる日が来ました。それから私は薬やサプリを全部やめました。すると恐ろしいことが起きました。前よりも強い鬱になったのです。やりたいことも出来ず、散歩すら行けず、引きこもり状態になったのです。そして不眠症。生きる希望すらなくなりました。

薬を再開すると、なんと仕事をしていたときの『鬱』と同じ程度に回復しました。

やっぱり、『病気』としての鬱ってあるんですね。

この本は『鬱』の持っている医学的、社会的解釈をもとに様々な現代の社会現象を『鬱』という言葉をキーとして解釈していく。

そこに見えてくるのは、人々の感情が社会の中に開放される人間関係の欠落である。そしてそこからうまれる「あきらめ」や「無関心」、「無責任」、「他力本願」、「医療(科学)万能主義」などの共通点が見えてくる。

現代は過去の『躁』の時代に対して『鬱』の時代である。敬愛成長が止まり、少子高齢化で人口も減っていく。その時代にあった社会のあり方と、人々の気持ちが『鬱』であり、次の時代へ変わっていく力である。