ラテン語のしくみ 小倉博行著 2014/11/10 白水社

ラテン語

矜誇

我我の最も誇りたいのは我我の持つてゐないものだけである。實例。ーーTは獨逸語に堪能だつた。が、彼の机上にあるのはいつも英語の本ばかりだつた。」(『侏儒の言葉(遺稿)』芥川龍之介全集 第九卷 1978/04/24 岩波書店、P.351)

私は語学が苦手です。ドイツ語はおろか、中学校・高校と勉強した英語も少しも読み書きできないし、日常会話も出来ません。語学コンプレックスです。始めから「私は外国語が出来ないんだ」と思い込んでしまうのです。

特に、英語のアルファベットと違う文字、ハングル文字やキリル文字やギリシャ文字などを見ると寒気が起きます。でも、日本語の文献に、ギリシャ文字やラテン文字が出てくると「読みたい」のです。つまり、発音したいのです。それで、羅連語の「読み方」を知りたくて、図書館から借りてきました。

私の家の近くに、地方図書館の小さな分館があります。そこに置いてありました。どうして、こんな小さな図書館にラテン語の本があるのかはわかりません。イタリア旅行ガイドブックもないのに(笑)。

「しくみ」

この本はラテン語の「入門書」ではありません。いや、入門書なのですが「語学書」ではありません。

この本は,ラテン語の骨組みから入ることによって,この言葉が持っている特徴を紹介しながら,その面白さを知ってもらうことを目指しています。

ですからこの本には、普通の語学書のような文法表がありません。また「これをクリアしなければ次の章に進めない」といったこともありません。(中略)読み終わる頃には「ラテン語はどのようなことをするのか」,イメージができあがっていることでしょう。(まえがき)

ということで、読み方だけではなく、一通り最後まで読んでみました。語学が超苦手な私にも一通り読めたのです。当初の予想通り、文法的なものは全く覚えていません(笑)。でも、文章の中にラテン語が出てきても、ほぼ発音がわかるようになった気はします。私たちが日常使っている言葉の原点や英語の単語の原点がいっぱい出てきて、とても楽しい本でした。

なんとなく「しくみ」はわかったので、もし今後(ないと思うけど)ラテン語を勉強する機会があれば、そのときにはもう一度読み直したいと思います。

なお、実際の発音の音声データは白水社のページ(こちら)からダウンロードできます。

ラテン語(ラテン文字)の読み方

ほぼローマ字と同じです。ラテン語は「(古代)ローマ語」なんですから当然ですね。英語みたいな変則的な読みはありません。

〈英語に慣れている人が注意する点〉

  1. 「c」はカ行の「k」の発音のみ。
  2. 「g」はガ行の「g」の発音のみ。
  3. 「v」はワ行の「w」の発音。これは慣れないとつい「ゔ」の発音をしてしまう。「w」という文字は基本的にはない。「u」の文字を使う文献もあるらしい。
  4. 「j」はヤ行の「y」の発音。「i」も(単語の最初なら?)「j」と同じ発音。
  5. 「qu」は一つの子音。
  6. 「x」は「ks」。

アクセントやイントネーションは実際に声に出すわけじゃないので、とりあえず諦める(汗)。

面白かったラテン語

Cōgitō ergō sum. コーギトー・ルゴー・ム 我思う故に我ありcōgitō=わたしは考える、ergō=だから、sum=いる、ある

Vēnī, vīdī, vīcī ウェーニー・ウィーディー・ウィーキー 来た、見た、勝った

Jacta ālea est. クタ・アーレア・スト 賽は投げられた

alibī リビー 他の場所で(アリバイ)

forum フォルム 広場(フォーラム)

villa ウィーッラ 別荘(ヴィラ)

名前のしくみ 「個人名・氏族名・家名(・添え名等)」

āctor(アークトル、働く人)、creātor(クレアートル、生み出す人)、doctor(ドクトル、教える人)、prōtēctor(プローテークトル、守る人)

dēmōnstrātiō(eng. demonstration、示すこと)、mōtiō(eng. motion、働くこと)、nātiō(eng. nation、生まれ)、sectiō(eng. section、切ること)

missiō(eng. mission、派遣すること)、sessiō(eng. session、座ること)

libertās(eng. liberty、自由)、vēritās(eng. verity、真実)、auctōritās(eng. authority、権威、威厳)、cīvitās(eng. city、部族)

BCはBefor Christ、ADはAnnō Dominīアンノー・ドミニー、年・主人、キリストの年以後

et cētera (etc エト・ケーテラ、そして・他のもの)

populus(ポプルス、民)、schola(スコラ、学校)populus meus(我が民)、schola mea(私の学校)

hic populus(この民)、Ista schola est.(それは学校です)、id oppidum(その町、id は英語のthe?)

labōrō(ラボーロー、働く)、lavō(ラウォー、洗う)、videō(ウィデオー、見る)dīcō(ディーコー、言う)、faciō(ファキオー、作る)、audiōs(アウディース、聞く)

vivō(ウィーウォー、生きる)、Vīvere cōgitāre est.(生きることは考えること)

ちょっとした文法

疑問文、否定文、〜したい、てにおは、過去、未来、辞書に載っている形などが豊富な例文で記載されています。ぜんぜん覚えていないけど、「なるほど、人数や性や「テニヲハ」によって名刺や動詞や形容詞が変わっていくんだなあ」という程度はわかりました。伸びしろを感じさせてくれる本です(笑)。

Amazonの中古本は、今637円+送料297円=934円。500円くらいになったなら買っちゃってもいいかなと思います。







[著者等]

小倉/博行
ラテン語学・フランス語学専攻。1997年早稲田大学大学院博士課程修了。現在、早稲田大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


言葉にはそれぞれ大切なしくみがあります。細かい規則もいっぱいありますが、大切なのは全体を大づかみに理解すること。最後まで読み通すことができる画期的な入門書シリーズ!
(音源は白水社ウェブサイトからダウンロードできます。)

「しくみ」シリーズの3大特長
・言葉の大切なしくみ(=文法)がわかる
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[ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4560086810]

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