
風の谷のナウシカ
やっぱり主人公は女の子じゃなくっちゃ面白くない。ジャンヌダルクがどうゆう女だったかは知らないが、ナウシカは少女であり、母親であり、とても日本的な強い女性である。少女の持つ神秘性と、母親の持つ強さ(それも神秘的であるが)の両方を持っている。そして、生命の持つ神秘性を直感的に分かっている。
人類は、自らの手で世界を破壊し、未来に再生の可能性を託す。世界の生態系は目的をもって造られている。それをナウシカは否定する。その存在そのものが生命の本来にそぐわないと。しかし、目的をもった生態系を否定しても、そこに生きる生命そのものは否定しない。自分たちがどんな運命を背負っていたとしても、生命であることに価値がある。たとえ滅びるのが運命であろうと、自分たちの生命は自分たちのものである。
ナウシカは、現実を見つめ、未来に希望を持つことを放棄するかのように未来の可能性(過去の人類が作った)を破壊する。しかし、彼女が破壊したのは自分たちの未来ではない。他人が定めた運命である。自分たちが自分たちの運命を生きるために。それは「傲慢」な行為であろう。しかし、彼女自身が調停者・裁定者にならざるを得なかったのだ。
彼女は、人々に世界がいつか浄化されることを告げる。しかし、人間の体がその清い世界に対応できないことを告げない。彼女は嘘をついたのだろうか。人々が自分の運命を自分で生きることができるようになったとき、彼女の嘘は無意味になる。それまでは、彼女は調停者であり続けるしかないのだ。
彼女はこれからも生命の尊さを伝えていくだろう。多くの死を見つめながら。それが彼女の選んだ道なのである。
(2000年記)
