インストール 綿矢りさ著 2001/11/01 河出書房新社

インストール 綿矢りさ著 2001/11/01 河出書房新社

現実の世界は常に目の前にあり、私たちはその中で生きていかざるを得ない。しかし、目の前にある現実はただ存在しているだけで、無意味である。その現実に意味を与えるのは人間である。

思春期の少女がかいま見る大人の世界。それも大人が作り上げたバーチャルな世界。そこでは自分をいかようにも演出できるように思えるが、その彼岸には現実があり、バーチャルな世界もその性格を当然反映している。それは暗闇のようでありながらパターン化された性(生)の幻想である。

そのパターン化の怖さを知った少女は、人生の目的を考えるために一段階成長しただろう。いや、成長ではなく自分の一部を失ったのかもしれない。

子供は、浅いが無限の可能性の中から、何かを次々に捨てて、残った部分を深めながら成長してゆく。「自由な社会」がその試練を与える。それが今の日本では成人になるための儀式なのだろう。

そして、最終的に何を残すか、あるいは、いかに自分の可能性を捨てずに生きていけるのか。それを決めるのは「個人」と、それ以上に社会の体制である。


高橋源一郎が文庫版の後書きで「完璧な日本語」だといっているが、そうだろうか。確かに無駄がなく、作為のない文章ではある。でもそれは明治以降の言文一致が完成した姿であり、それにケータイのメールやチャットの文章表現が「仲間内」から社会全体に広がりとけ込んだ姿である。(もちろん、ケータイやチャットの世界は社会から逃れ続け、変化し続けている。)


片岡K監督の映画は原作に忠実であり、この本の世界を忠実に再現している。というより、原作が優れて映像的であるので脚色のしようがないともいえる。上戸彩の演技は完璧であり、アイドルではなくこの本の主人公そのものである。映画も是非見てほしい。






[著者等]

綿矢 りさ (ワタヤ リサ)
1984年、京都市に生まれる。現在、大学2年生。2001年『インストール』で、最年少17歳で第38回文藝賞を受賞する。『インストール』は、子供から大人まで多くの支持を集め、24万部のベストセラーとなる。

突然、学校生活から脱落することを決めた高校生・朝子。ゴミ捨て場で知り合ったクールな小学生かずよしに誘われて、チャット風俗で一儲けすることに。押入れのコンピューターから覗いた「オトナの世界」とは? 最年少・17歳、第38回文芸賞受賞作。



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