資本論を物象化論を視軸にして読む 岩波セミナーブックス 廣松 渉 (編集) 1986 岩波書店

資本論を物象化論を視軸にして読む

廣松の物象化論はよくわからないし、単なる(歴史貫通的な、あるいは人間にとって不可避な)認識論として読むことも可能であるし、近代社会に限定した物と読むことも可能なように思える。

前者であってもいいのであるが、ともかく近代資本主義社会を理解する上では、有効であることは間違いない。その意味では、マルクスの言う物神崇拝と同義語と捉えたほうがいいだろう。

この本は、タイトル通り、物象化論を支軸にして、資本論3巻を読み直す試みである。単なる入門書ではなく、論争となりそうなところはコンパクトに説明されていて、本来ならば何冊の本にもなるところを1冊にまとめている。その分、資本論にかかる論争についてはある程度の知識を持っている必要があるであろう。

少なくとも、資本論を読んで、疑問を持つことがない人には無用の本である。

マルクスの弁証法、それに基づく記述の方法がこの本を読み進めるうちに、わかるような気にさせる魅力のある本である。