
安部公房著作集を読み始めたが、字が小さいせいか「終りし道の標べに」の途中で挫折。本棚に眠っていた「密会」を読んだ。
これが最高に面白い。爽やかな読後感と充実感。やはり安部公房は天才だ。先に村上春樹の「騎士団長殺し」の紹介をしたので、その対比で。
安倍文学の特徴の一つが、場面設定が現実離れしていないこと。異様な光景が現れても私達の立っている世界と同じ地面でつながっている。現実離れしていればいるほど、それは現実の中に潜む真実である。
私達が当たり前だと思っている世界から、真実(それは当たり前ではない)という異様なものを引っ張り出して、それを白日のもとに晒すことによって、私達に真実を突きつけるのだ。
私達は、その真実に驚き、うろたえるがそれを直視しなければならないのだ。
その事によって、私達は非日常と隣り合わせにいる、いやむしろその非日常世界の中で日常生活を送っていることに気が付かされる。
それは、隣人を犯罪者かもしれないと思わせる浅薄な現代の風潮とは異なる。他人は常に非日常である。それを前提にともに生きなくてはならないのだ。非日常は「可能性」である。その可能性を選択していく生き方しか私達はできないのだから。
