
古本屋には3巻までしかなかったので、そこまで読んだ感想。「風と木の詩」(あれは最後まで書かれたんだろうか)以来の名作だと思う。
性は、個人と社会の接点として、すべてのことに影響を与える。性をどう取り扱うかが社会体制を決めるといってもいいくらいである。しかし、その性というのは物理的・肉体的なものでありながら、それを越えるものである。だからこそ社会が性のあり方を規定する必要があるのである。(ジェンダーのことをいっているのではない。もっと広く「セックスそのもの」--いい言葉が浮かばないが--のことである。)それは、逆にいうと性が社会的に思われているほど固定的なものではないということである。性は図らずも社会構造を飛び出す。浮気、心中、強姦等の性犯罪・・・。しかし、「男女」という基本的な社会構造を飛び出す可能性も性の中にはあるのだ。そのとき、精神と肉体、つまり近代の主体・客体構造を乗り越える一つの手段として「性」の存在が浮かび上がってくる。
主人公(?)の「花房」は、現在の行き詰まった社会構造の中に舞い降りた天使である。しかし、天使でありながら人間であるが故の業を背負っているようである。次巻以降に期待する。
(4,5)
最後まで読んだ。花房は、住む世界が違うといって去ってゆく。彼女は身ごもっていた。子供を産むという性(さが)。周縁人(別の世界の住人)であるがゆえに、自分も傷つき、関わる人をも傷つけてしまう。排除や差別が人の性であれば、彼女(彼)と分かり合うことはできない。しかし、彼女を認めること、すなわち自分の中の少数者(被差別者)と向き合うことにのみ、彼女と自分が共に救われる可能性があるのである。自分が多数者である限り、彼女も自分も救われないのだ。彼女と関わったものは、こちらの世界に戻ることができるのだろうか。もし戻ったとしても、自分の中の何かが変わっているはずである。それを大事にしてほしい。
(2000年記)
